マルチタスクのススメ

 

聞きなれない言葉ですが、これはコンピーユータ用語で「複数の処理を同時に実行すること」です。

これをビジネスで採用する業種が多くなりました。

一つの仕事を専門にするのではなく、時間帯によって、また全体の仕事の状況の変化によって柔軟に専門外の仕事も手伝うことです。つまり、常に暇な人間がいないようにすることです。

 

これができなくて破綻したのが、日本航空です。よその航空会社は、乗務員が機内清掃をしたり、機内のサービス以外の業務をしたりして他社と価格競争をしています。

民間のサービス業では当たり前のことです。

 

映画館などは、いくつもの劇場(スクリーン)の上映時間をずらして、従業員は掛け持ちで対応しています。また、設備もそれに対応できる構造になっています。これが、シネマコンプレックス(シネコン=複合映画館)です。

 

国立や県立(都立)のなど大規模で税金補助が潤沢な劇場は別として、公営の小規模劇場ではマルチタスクでやらなければならない状況になっています。舞台の仕込みを終了した技術スタッフは開演までの時間、控室でマンガやテレビを見ていないで、受付や楽屋の業務、場内放送も担当すべきです。

すでに実施されていると思いますが、音響スタッフが照明の仕込みやチェックをサポートしたり、館長までも現場を手伝ったりすることで、少人数で効率良く劇場を運営できます。マイクチェックは一人では不可能ですが、数分で終了してしまうものですから、舞台進行や照明のスタッフがサポートすれば済むことです。

 

国立能楽堂では、委託スタッフが行う毎日の音響設備のチェックのサポートとワイヤレスマイクの装着は楽屋担当職員がやっています。学習すれば、この程度はすぐにできるのです。

宮城県の中新田バッハホールの館長は、パイプオルガンを調律する技能を習得していて、オルガンコンサートがあるときは館長自ら調律しています。これを批判する職員もいましたが・・・

一般社団法人日本音響家協会は、すでにマルチタスクを取り入れた技能検定を実施しています。最近、よその団体も、やっと始めたようです。

 

指定管理者の技術スタッフは保守業務もできる能力を備えるべきだ との意見もあります。これもマルチタスクです。

メーカーが保守をした後は、必ずと言えるほどトラブルが発生するものです。

そのためか、最近は現場経験の豊かな技術者による保守が人気です。それは、現場の経験があるので、保守終了後に元の状態に完全復帰できる能力を持っているからです。つまり、その設備は日常どのように使われているかを判断できるので、完全復帰できるのです。(2007年)